番外編  ちょっといい話 「トンボに掴まれた人」

   トンボ狂会メンバーで、カエルの分校の賛助会員にもなっていただいているみいさんからちょっといいお話が届きましたので、本人の了解を頂き、ここへ転載させていただきました。
  なお、文章はすべてご本人が書かれたままです。



  トンボ狂会のみなさまはじめまして。
昨年入会させていただいた、みいと申します。
いつもみなさまのすばらしいトンボの写真をみせていただいて感銘をうけています。
そして、ここに私が投稿する日はこないな、、、といつまでたっても上達の気配のないカメラの腕にあきらめ半分でおりました。

  そんな私が今日はじめて投稿させていただきたいと思ったのは、とても困っているトンボとの出会いがあったからです。
美しいトンボの写真をご期待されると申し訳ないですが、写真は私の父がその時たまたま持っていたsonyのコンデジで撮ってくれたものです。
写真のクオリティというより、私の不思議な出会いをみなさまに見ていただけたらなと思いました。

  私の実家の近所では2年前の台風の時に水路があふれ、田んぼの横のイチジクの木も流され、床下浸水にあった家もありました。
このトンボさんはきっとその時に上流から流れてきて、じっと大人になる時を待っていたのだと思いました。
せっかく大人になったところで試練にあい、私が通りがかった17:30までかなり長い間困っていたのだと思うと切ない思いがいたします。
身体はすでに完全にきれいな色になっていて、複眼がまだ灰褐色で本来の美しい色になっていませんでした。
トンボは前翅がけがをするととべなくなると本で学びましたが、確かに指の上でウォーミングアップするときは前翅の動きだけを確認して後翅はそれほど動かさないでいる気がしました。

 こんなしょぼい人間のメスの手を借りないといけなくて、そのうえ名前を間違えられて、とトンボさんにとっては踏んだり蹴ったりで気の毒なことでした。
ずいぶん長い間目と目をみつめあっていたので、「よく目をみてよ!離れてないよ!」とさぞや言いたかったことでしょう。
 ご興味を持っていただけた方はよかったら下記(省略)のピカサアルバムをご覧くださいませ。

このトンボさんが素敵なメスと出会ってくれますように!

 みい



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  ▲ 大阪の実家近くのいつもの犬の散歩コース。
     道路にあいた排水溝(?)の金属格子のところでなんだか不思議な音がしました。
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  ▲ 覗き込むとトンボのおおきな目がこちらを見ています。
     時々ぶんぶんと飛んで、なんとか出ようとするのですが、金属格子より翅が大きくてとても出られません。
     格子の金属にしがみつくのだけれど、つるっとすべってしまって力が入らないみたいでとっても困っています。父が翅を掴んで出そうとしましたが、それは嫌なようで掴めません。
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  ▲ 近くに落ちていたトクサの枯れ枝をもって差しのべたところ、つかまりました!じわじわとトクサをのぼってきます。
     ところが頭が格子の真ん中に来るようにしても左右の両翅ともひっかかってしまいました。大きいのです!
     しかしゆっくりトクサを引っ張るとトンボはしっかりつかまっていて、左右の前翅は少したわんだけれど、無事格子の外へ。
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  ▲ 無事に後翅もでました!
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  ▲ しばらくじっとしていて、疲れ果てたのかな、と思ったら今度はトクサをだんだんのぼってきてとうとう私の指に手をかけました。
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  ▲ とうとう指に乗り換えてしまいました。 立派なお姿です。
    これだけ立派な全身をみても、「目が離れている気がする。君はサナエトンボ??そうだ!きっとコオニヤンマちゃん!!」と思っていました。
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  ▲ まだ翅は少し半透明。このあと前翅を何度かぶるぶるっとウォーミングアップを繰り返すのを指にのせたまま自宅に帰りました。
    そして自宅庭についた途端に空高く飛び立っていきました。
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  ▲ 格子の幅は9cm。両翅を広げると12cmほど。
     「日本のトンボ」のサナエトンボ科をどれだけみても同じ胸の模様はいなくて、やっと「オニヤンマの♂」だったことに初めてきづきました。
     オニヤンマを掴んだ人はいっぱいいると思いますが、オニヤンマに掴まれた人間はそんなにいないかなと思って幸せな気分になりました。




   追記: この件に関するその後のやり取りのメールご紹介しておきます。


 みいさんへ

 良いことをされましたね。
 オニヤンマにとってはいい人に巡り合え、トンボとして生きる道が開けました。
 せっかくだから、「加茂のトンボ」番外編で紹介させていただけますか?
   オニヤンマにとって良かったこと。
     ① 感性の豊かな人が通りかかり、翅音に気付いてくれた。
     ② たまたま、トンボが好きな人だった。
     ③ サポート役のお父さんも心優しい方だった。
     ④ 暫く大雨がなかった。
 などが、トンボに生きる道を開いてくれたように思います。
 これだけ立派な体ですから、良い伴侶を見つけ子孫を残しますよ。 


 用水の上流域を探索する楽しみが増えましたね。
 ご家族で、草原や山に隣接した道を歩いてみてください。
 今回助けたトンボに出会える可能性が高いです。

 やまね





 やまねさんへ

 ありがとうございます。
上流域にいけば会えますでしょうか、実家に帰る楽しみがまた増えました。

 せっかくだから、「加茂のトンボ」番外編で紹介させていただけますか?
はい、どうぞお願いします。
 あのトンボもこんな遠い名古屋でちゃんと「オニヤンマ」とすぐにわかって「立派な体」と言ってくださるみなさまに見てもらえたら喜んでいると思います。

 本当はもうちょっとだけ長くとまっていてくれたら母にも見せれたし、一眼レフも取ってこれたので
「ちょいと脚を持っておけばよかったのかな…」と少し後悔していると
 父に「持ってたら噛みつかれてたぞ。痛かったと思うぞ」と言われました。
 「えー助けてもらっても噛むかなあ」と言いつつも噛みつかれたというオチがなくて良かったでした。

 みい




 みいさんへ

 確かに、お母さんにも観せてあげたかったですね。
 でも、観れなかったことが、お母さんにとっては観たいにつながり、観たときの感激があります。
 ご家族で、上流域のトンボ探しをしてみてください。きっと出会えますよ。
 ただし、玉手箱は開けないように。おばあちゃんになってもいいなら別ですが。

 脚を持たなくて良かったです。
 噛みつかれるだけでなく、トンボは必死に逃げようとしますから、脚がちぎれてしまいます。
 トンボを持つときは、翅をたたんで挟むように持つとバタバタしないので、噛みつかれたり、トンボを痛めないで済みます。

 転載許可、ありがとうございます。
 今日中に「加茂のトンボ」へアップさせていただきます。

 やまね
by tombo-crazy | 2014-06-18 16:50 | つれづれ感じるままに
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