6月12日(金)~13日(土)雨のち曇り その① カエル編 金曜日は雨になるとの天気予報に、観察のチャンスと長野県まで遠征しました。 「雨が降るのにトンボ?」と不思議に思われるかも知れませんが、狙いはモリアオガエルです。 今シーズンのモリアオガエルは、どの生息地も、いろんな事情で産卵のタイミングを逃し、卵塊を見ることがあっても、カエルを見ることは少なかったのです。 カエルは、トンボと違い水辺に行けば観れるのではと思われますが、ほとんどのカエルは、繁殖期以外は水辺から離れて暮しています。 モリアオガエルも、繁殖期が過ぎると森に帰り、樹上等で暮しています。 カエルになったばかりの幼体も、暫くは水辺近くの草むらで過ごしますが、山へ入ってしまいます。 だから、カエルの姿を観るのは、狙ったトンボの産卵を観るくらい大変なのです。 でも、今回の生息地は標高が1250mほどありますから、産卵のピークはこれからで、観れる可能性が高く、期待に胸を膨らませての遠征でした。 トンボのサイトでカエル? カエルとトンボは、成長(変態)の過程で水の中で暮します。 種によっては、同じ時期に、同じ水の中で暮しているのです。 ( 一つ屋根の下? 共存 ) ただ、自然界ですから、お互いが喰うか喰われるかの関係にもあります。 大型トンボのヤゴにとって、オタマジャクシはご馳走です。 一方、オタマジャクシは雑食で、藻や水草など植物質のエサを主に食べていますから、死んだヤゴならまだしも、 自分の方が食べられるかも知れないリスクを冒してヤゴを食べることは稀なことです。 なら、トンボ屋としては、カエルは許したるか…となりそうですが、そう単純には行きません。 なぜなら、トンボになった時、カエルに喰われてしまうことがあるからです。 特に、大きく悪食のウシガエルや、運動能力の高いトノサマガエルは、ご用心なのです。 トンボを観察していて、パクって咥える瞬間を見たことがあるかと思います。 気の毒なのは、産卵中のペアをパクってやってしまうカエルです。 たいていの場合、口が大きく、水の中で目玉だけ出して待ち伏せることの多いウシガエルですが…。 トノサマガエルの場合は、探雌飛翔中の♂がやられることがよくあります。 カエルは畔の上でしっかり観察してますからね。目の前を行ったり来たりしていては、イチロウ選手でなくとも3割近い打率でパクってやりますよ。 どなたか、カエルがジャンプしてトンボをパクってやるジャンピングキャッチの瞬間を撮って発表してください。 より難易度が高いです。 自然界は、左様に厳しいのですが、トンボにしてもカエルにしても、それらのリスクを含めて、たくさんの卵を産みますから、 お互い次世代も生き残るためと、私たち人間も片方を悪者にしたりしないで、どちらも受け入れてあげたいと思います。 前置きが長くなりましたが、トンボ屋さんにとっても知っておいて損のないモリアオガエルの記事を見て頂いた後で、タカネトンボの羽化に移ります。 カエルはいいよと言う方は その②「タカネトンボの羽化」にジャンプしてください。 ■カエルの産卵時期を知る 種によって、産卵時期は、いろいろです。 まだ雪のちらつく1月から3月頃に掛けて産卵するグループ(蛙合戦あり)と、 田植えが近づいてから産卵を始めるグルーがあります。 遅いのは9月ごろ。 トンボもそうですが、カエルたちは、産卵の時期をずらすことで種同士の余分の争いを避けていると思われます。 私たち人間も、過密な都市で暮すよりは、田舎で暮らすと、のんびり出来ますね。 とは言え、都市部には都市部の魅力があるから、人それぞれが判断して棲み分けているのですが…。 水辺でカエルが鳴いていれば産卵が近いです。(ニホンアマガエルなど一部例外あり) カエルの♂は産卵に適した水辺で、盛んに鳴いて、♀に自分の存在を知らせます。 (メーキングコール、広告音) 声がする辺りを探すと、木の葉や草の影などで鳴いている♂ガエルを見つけることが出来ます。ただ、警戒心が強いですから、静かに近づいてください。 ▲ 時々鳴いたりして、♀が来るのを待つ♂のカエルたちです。 上の写真で気づかれたと思いますが、モリアオガエルの体色は一般にニホンアマガエルやシュレーゲルアオガエルのような、明るいみどり色のイメージを持っている方が多いですが、地域による違いなども含め、みどり一色、斑紋あり、赤褐色などと、個体変異があります。 ▲ 産卵が近づき、お腹が大きくなった♀のモリアオガエルです。 通常♂よりも♀は大きいです。 草むらの中で気に入った♂へ近づくタイミングを計っています。 一方、♂たちは産卵に適した木の近くに潜んで、カスタネットの音のような鳴き声で♀の気を惹こうと努力します。 ▲ 抱接です。 カエルは哺乳類のような交尾器官を持ちません。 ♀は気に入った♂がいると背中に乗ることを受け入れ、♂は♀を抱きかかえるようにして♀を刺激し、産卵を促します。 この状態を抱接と言いますが、あぶれた♂も次々と♀の上に覆いかぶさろうとしますが、結局は♀と接することは困難で、♂の体にしがみついて産卵の時を待ちます。 中には、抱接をしないで、近くの枝で産卵を待つちゃっかりものもいます。 卵塊の中では、卵と♂たちが出す精子とが出会いを求めて最後のせめぎ合いをしています。 抱接から継続して産卵活動に入るカエルも、近くで待機していたカエルも、この中に入ることで、自分の遺伝子をつなぐことが出来るのです。 ♀にとっては、体力のいる大変な営みですが、より良い子孫を残すための神聖な営みです。 なお、産卵の時間帯ですが、一般的には夜が多いですが、天候によって左右されますから、運が良ければ昼間でも見ることは可能です。 写真を撮ることを考えると、前日夕刻にカエルたちが集結していることを確認しておき、小雨降る朝がペーターでしょうか。 ただし、くれぐれもカメラを濡らさないようにしてください。 私は、既に3台、カエルの撮影で沈しています。 ▲ 雨の中、産卵したての卵塊です。 この中に300~800ヶほどの卵が入っています。 上の写真で「あれ?」と思われた方がおられると思います。 モリアオガエルは木の上で産卵するとのイメージがあるのですが、実際には草の間や、地上に産卵していることも1割ほどあります。 理由としては、♀が木に登る前に抱接されてしまい、登ることが出来なかったからではと考えられています。 水辺には、120ヶほどの卵塊がありましたが、例年300ヶほどの産卵が確認されていますから、後1週間は産卵があると思れます。 〔補足〕 モリアオガエルと同じ仲間にシュレーゲルアオガエルがいます。 このカエルも泡状の卵塊を作りますが、産卵する所は、畔の土の中や、地上、草の間です。 ただ、両者は、姿も声も似ていていますので、ややこしいですが、シュレーゲルアオガエルは、体の大きさがモリアオガエルよりも小さく、卵塊も小さいです。 下の写真の小さなカエルがシュレーゲルアオガエルです。 木に登ってまったりしていますので、子どものモリアオガエル?と思う方も出て来ますが、一番の見分けのポイントは眼の周りの色合い(虹彩)です。 シュレーゲルアオガエルは金色で、モリアオガエルは赤味がかっています。 生息地によっては、同じ時期に産卵に来るのでややこしいです。 ▲ ♂と出合う前に排卵してしまったモリアオガエルの卵です。 カエルの世界では時々ある現象です。 おまけは、同じ両生類のアカハライモリです。 モリアオガエルは雨の日に孵化して、雨水と共に卵塊から流れ出た幼生(オタマジャクシ)を下で待ち受け、食べてしまうのが、アカハライモリです。 モリアオガエルにとっては、天敵のような存在ですが、彼らも生きて行くための行為なのです。 ですから、トンボ好きのみなさん、今後ともよろしくお願いしますね。 また、イモリたちは、私たち人間の再生医療に貢献していることも知っておいて頂ければ幸いです。 タカネトンボに続く。
by tombo-crazy
| 2015-06-14 20:55
| トンボ見て歩記
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