ヨツボシトンボ (トンボ科ヨツボシトンボ属)

                    ヨツボシトンボは、絶滅危惧種として有名なベッコウトンボと同じ、ヨツボシトンボ属のトンボです。
                    どちらも、ヨシなどの挺水植物が繁茂している池沼・湿地と、周辺の豊かな植生が不可欠と言われ、カエル谷はその条件に合って
                    いますから、ヨツボシトンボの生態をしっかり観て、その生息環境を保全して行くことで、ベッコウトンボの保護にとっても役立つ情報
                    が得られる可能性があります。
                    また、トンボは翅がありますから、いつの日かカエル谷にも飛来し、定着してくれる可能性もあるのではと、淡い期待を寄せています
                    ので、カエルの分校としても注目しているトンボです。
                    私が各地のベッコウトンボとヨツボシトンボの生息地を見ていて感じるのは、どちらもヘドロが堆積したため池や、沼地からは消えて
                    いるように思います。 (ベッコウトンボ生息地の6ヶ所中3ヶ所は、ヘドロが堆積し、ベッコウトンボが消えたり激減しています。)

                    例年、カエル谷にヨツボシトンボが現れるのは、4月第1週に姿を見せるシオヤトンボから数えると、おおよそ8番目ほどで、5月半ば
                    になりますが、そんな思い入れがあり、なじみのトンボを、うっかりして 「加茂のトンボ」 にアップしていませんでした。
                    ちなみに、カエル谷に現れるトンボを、ヨツボシトンボが現れるまで順に上げると、シオヤトンボ、オツネントンボ、ホソミオツネントンボ、
                    ホソミイトトンボ、タベサナエ、アサヒナカワトンボ、クロスジギンヤンマの次ぐらいで、シオカラトンボや、ハラビロトンボと同じ頃に姿を
                    現します。
                                    
                    
              2011年5月30日 
                    朝からカエル谷へ入り、台風2号が刺激した梅雨前線の雨の後始末などを済ませた後、サナエトンボを見ようと渓流へ出かけたら、
                    意外なことにヨツボシトンボに出会いました。目撃した時間は15:42です。
                    文献などでは、挺水植物が繁茂する池沼や湿地、湿原などに生息するとのヨツボシトンボなのですが、どうしたことでしょうか?
                    現地でたまたま一緒になったトンボ狂会のHさん曰く、「台風で飛ばされて来たのでは…」野鳥などでは台風の後に珍鳥が見られる
                    と言いますので、あながち否定は出来ません。いずれにせよ、渓流でヨツボシトンボを見たのは初めてでした。
                    なお、ヨツボシトンボの数ですが、2時間ほどの観察で1頭だけでした。
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                      ↑ 渓流のすぐそばにいたヨツボシトンボの成熟した♂です。 疲れた様子はありませんでした。
                    人間も、若いうちは、新天地を求めて、ふるさとを離れたり旅に出ますが、生きものたちの中にも、そんな行動をとる個体がある割合
                    いるようです。 それらの行動が、生息範囲を広げたり、より優秀な子孫を残すことに役立っているようにも思います。
                    翅のないカエルでさえ、標高700m近い尾根を越えるのを確認していますから、翅のあるトンボであれば、私たちが思っている以上
                    に移動していると思います。
                    そうしたトンボたちが、定住できるような自然環境を回復させることの重要性を思います。
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                      ↑ すぐ近くにいたアサヒナカワトンボの若い♂です。どちらも岸辺のモミジイチゴの葉にとまっていました。
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                      ↑ ヨツボシトンボのいた渓流です。前夜までの雨で増水しています。標高は650mほどです。



                    以下の写真は、同じ日の午前中に、カエル谷のとんぼ池で観たヨツボシトンボです。
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                      ↑ ヨツボシトンボの単独打水産卵です。                         (2011年5月30日 11:06 カエル谷)

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                    ↑ 珍しく午後水辺にいたヨツボシトンボの♀です。 ♂と比べ、腹部に幅があり、ぽっちゃりした感じに見えます。
                    ほとんどのトンボで言えることですが、産卵のとき以外、水辺で♀のトンボを見ることは少ないです。
                    彼女たちは、午前中に産卵を済ませ、午後は、うっとうしい♂を避けて、水辺から少し離れた所で休んだり、餌を捕ったりしています。
                                                                         (2011年5月24日13:34 カエル谷)
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                    ↑ ヨツボシトンボの♂です。 ♀が産卵時期以外水場を離れるのに対して、♂の場合は、午後になっても水場に陣取っています。
                    彼らは、 ♀が来る場所=産卵に良い場所 を、他の♂に渡したくないため、♀がいない時間帯も水場を離れず、こうして
                    アキアカネのように枝先などで休んでいます。                        (2011年5月31日13:51 カエル谷)
                    
                    ですから、観察や、写真を撮ろうとしたとき、この習性を考えて水辺へ行けば、自分が観たい、羽化や、交尾、産卵などのシーンに
                    出会うチャンスが増えることになります。

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                      ↑ 前日までの雨に打たれ力尽きたのでしょうか?      合掌               (2011年5月30日 カエル谷)



              優しかった?ヨツボシトンボ
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                    ↑ ヨツボシトンボの♂がパトロールを終え、縄張りに戻って来ました。
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                    ↑ ちょいと休憩です。
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                    ↑ 下から虫君が、のこのこ上がって来ました。 ちょっと腰を上げ、進路を譲ろうとするヨツボシトンボ君です。
                    カエルの場合、目の前に虫がいても、相手が動かない限り捕らえることをしないのですが、トンボの場合、どうやら飛んでいない虫
                    には、餌として反応しないようです。
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                    ↑ 自分が飛び立ち、虫君に大切な縄張りを明け渡しました。 優しい?ヨツボシトンボでした。 (2011年5月24日 カエル谷)


                    
by tombo-crazy | 2011-05-30 23:55 | トンボ科
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