その後のマダラナニワトンボ

2010年10月
愛知県のマダラナニワトンボは、現在、尾張と西三河にある二つのため池に隣接する湧水湿地で生息が確認されています。
ただ、どちらも、かろうじて生息している状態で、近くに生息地がないこと、湧水湿地そのものが脆弱であること、採集圧などから、近い将来絶滅が懸念されます。

マダラナニワトンボの生息環境
両生息地のマダラナニワトンボの生息環境を上げると
①木曽川などが作り出したと言われる標高 80~190mほどの洪積台地の谷間にある池で、礫や粘土を含む地層になっています。
②池の水深はあまりなく、岸辺が自然の駆け上がりとなっていて、山と接しています。
→ 将来、池の改修を行うときは、堤体側を除き、現在の環境(池の姿・形や取り巻く林など)が維持されることが肝要です。
③ため池には湧水湿地が隣接していて、池周囲の植生は変化に富んでいると言えます。
→ 池を取り囲む背後の丘陵地などの開発は、これらの湧水を断ち切る恐れが高いので、山を含めて保全することが大切になります。
④池を取り囲む山は、池の水面からの高さで 30~50mほどの丘陵地です。
⑤池を取り囲む山の植生は地質的に貧栄養であったこともあり、ネジキ、タカノツメ、アカマツ、コナラなどの疎林となっていますが、
山の木を人が利用しなくなったこともあり、ソヨゴなどの常緑広葉樹への遷移が進んでいます。
→ 林の中が暗くなると、将来マダラナニワトンボに悪影響が出るかも知れません。
なお、どちらの生息地も、池を取りまく山は、戦前から戦後の間もない頃は禿山だったとの証言を得ています。
⑥池に隣接する湧水湿地には、ヨシやガマなどの背丈のある植物ではなく、シラタマホシクサなどの東海要素植物群やイネ科植物があります。
⑦半径2Km以内には、湧水湿地の隣接した似たようなため池が点在しています。

現在は2ヶ所でしか生息が確認されてないマダラナニワトンボですが、
湧水湿地を隣接する似たような水辺が多い当地は、かつて複数の生息地があったと推定されます。
実際、それらしい過去の記録にも出会っていますし、見かけたとの情報も得ています。
私自身、♂1頭を某大学敷地内のため池に隣接する湿地で一昨年目撃しています。
ちなみに、現在の生息地の某池との直線距離は2Km弱ですので、分散飛来の可能性が考えられます。
             
なお、このため池に関しては、バス釣り人などから植生などを守るためなのかフェンスで囲まれてしまい、その後の調査が出来てないので、
大学と連携出来たらと思っています。 
人目につき易いことを除けば、植生、湿地の規模共に良く、大学敷地内ということもあり、定着してくれたら保護はし易いと思います。            


■旧西加茂郡の某池(湿地)

数は少ないものの、かろうじて生き残っていました。
 
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 ↑ マダラナニワトンボの成熟した♂です。
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 ↑ 共にマダラナニワトンボの連結打空産卵です。 (いずれも2010.10.6 旧西加茂郡の某池で)


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 ↑ 雨の日はどうしているか確認に行きましたが、見つけることが出来たのは、アオイトトンボ、オツネントンボ、マユタテアカネ、アキアカネだけで、
いずれも疎林の中の木の枝で、雨を避けて休んでいました。 マダラナニワトンボトンボは判らないことだらけです。 (2010.10.9)


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 ↑ 某大学の湧水湿地を隣接する池です。  (2010.8.25)
   かんがい用ため池と言うよりも、周囲の開発で地形が変わり、自然に出来たようです。これ以上は開発されない感じです。    
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 ↑ 同じ池です。将来、マダラナニワトンボが繁殖してくれたらと願っています。 (2009.9.27)

by tombo-crazy | 2010-10-11 11:23 | トンボ科アカネ属
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